今回の安倍内閣についてですが、安倍首相は大変人事が見事でした。というのは、 18 人の閣僚全員が、その分野の専門家や、大変理解が早く、表現力に秀でた方々であります。そのため、全員が政策的な理解があり、かつ、国会答弁や記者会見の場では、どんな状況であっても、立ち往生することなく、対応をすることができています。
また、今回の内閣は官邸主導で物事を動かしており、各大臣は、自分の政策もあるのですが、常に総理の意を体しながら動いています。これまでの民主党政権や、自民党政権でも時々あったのですが、大臣が「総理はこう言っているが私はこう思っている!」というような意思疎通の齟齬が起こっていません。
これだけ聞くと簡単なように聞こえるかもしれませんが、それはひとえに、官邸の設計が上手かったことに他なりません。実は官邸というのは大変難しい組織です。なぜなら、首相官邸に集まる官僚は、全員、官邸固有の人材ではなく、各省庁からの人材の寄せ集めで構成されています。それぞれが出身省庁の利害や政策を考えながら行動をしています。また、官邸の中では、総理大臣、官房長官、官房副長官の三役が働いているのですが、この三役はお互いものすごく忙しい役柄です。そのため、忙しさにかまけてコミュニケーションを怠ると、官邸を動かす人々がバラバラになり、距離が生まれます。そうならないように、安倍首相は官邸の人事にも工夫をされています。現職の官房副長官は全員過去官邸勤務経験が1年以上あり、また、首相秘書官も6人中4人は官邸経験を持っています。そういった官邸の雰囲気や動かし方がわかっているメンバーがそろっているからこそ、今官邸はまとまって動くことができています。
さらに、これは私の提案ではじめたのですが、毎日、短い時間でも、総理、官房長官、官房副長官、総理の首席秘書官の6人で打合せをしています。この時間は大変貴重で、雑談で終わるときもあるのですが、総理が「この案件はここまでに絶対やりたい。」ということを話されると、私たちが総理の意向を汲んで各持ち場で対応をすることが出来ます。また、私たちから「このような変な動きがありますから気を付けてください。」「マスコミからこのようなことで批判が出ていますよ。」と進言することもあります。このように、短い時間でも、議論を行い、コミュニケーションをとることによって、官邸の気持ちが一つになります。新聞や週刊誌は一生懸命官邸のアラ探しをしていますが、官邸からは不協和音は出ず、一枚岩で活動をしています。