基本的には内閣官房が全体の司令塔として各テーマの全体的な戦略を、内閣総理大臣の下で行います。そして、内閣府では内閣官房の仕事の、より具体的な施策を行うのです。具体的施策を実現する場として省庁も挙げられるかと思います。省庁は専門分野に特化した案件について行っております。しかし、近年では専門性のみでは対処できない問題も増えてきました。内閣官房の戦略を、各省庁との連携を行いながら実現に向けて異体的施策を講じていくのが、内閣府の主な仕事です。
例えば子育ての問題などを取り上げると、幼稚園の管轄は厚生労働省であり、保育園の管轄は文部科学省です。子育て支援の話はワークライフバランスなどの働き方の問題を考えるのであれば経済産業省なども絡んでくるのです。一つの省庁を超えるような問題の全体を見なから各省庁間で調整を行っています。
こうした背景で内閣府の活動範囲が拡大しています。医擦政策もそうです。ノーベル賞を受賞された山中教授は、かつて補助金を毎年別の省庁からもらっていました。最初は医療関係の仕事であったため厚生労働省、次の年は研究として予算を必要とするということで文部科学省、その次の年は産業化を視野に入れるということで経済産業省といったような形であったそうで す。支援省庁が変わるたびに、山中教授は毎回同じような説明を聞き、繰り返し各省庁に提出するために分厚い書類の処理をしていたということです。また、毎年省庁が変わっていくという ことは、もしかしたら来年は補助金がもらえるかどうかがわからない、という不安を抱えながら研究をすることとなるのです。日本にとって価値のある研究者にそのような時間的、精神的負担を被らせるわけにはいけないですよね。ということで、内閣府が一元的に管理して、行政上の手続きを気にすることなく研究をしていただけるようにしました。日本の国益になることを、省庁を超えて全体として進めていくことが、内閣府の役割です。また、私が担当している TPPも極めて複雑な利害関係の下に成り立っています。外交的側面から判断をするなら外務省の管轄です。工業製品の輸出という観点からなら経済産業省です。農作物の輸入関税なら農林水産省です。これらが省庁で個別に交渉を進める、ということは大変難しい。そういった案件は内閣府が担当し、全体としての駆け引きを行っているのです。TPPは、甘利担当大臣が戦略を決め大局の交渉を行っていきます。例えば、「コメの輸入量の制限」などの、皆様の日常に関わるような大きなトピックは甘利大臣が主導で進められます。そして、内閣府内閣官房が具体的な戦略を交渉、調整しています。
調整役としては、政府・与党間で働くこともあります。与党が政府として政策を進めていきますが、与党も一枚岩ではありません。どうしても与党内で、内閣に参加をしていない方は、政府の意見とは必ずしも一致しない部分というのは出てきます。そのような場合でも、与党で一致団結するために、内閣に入っていない皆様との調整や意見交換も行っています。